オーダーメイドAI開発は ①ヒアリング → ②要件定義 → ③小さく試作 → ④本実装 → ⑤運用伴走 の5フェーズで進みます。中小企業向けに30〜100万円帯で組む場合、相談から納品までの所要期間はおおよそ 1.5〜2.5ヶ月、お客様側の実作業時間は 合計15〜30時間 が目安です。AI開発と聞いて身構える経営者は多いのですが、実態は思っているより軽い、というのが率直な感触です。
「進め方が分からないから動けない」という相談を月に何件かいただきます。検索すると出てくる「AI開発の流れ」は、構想 → PoC → 実装 → 運用の4段階で書かれていることが多い。間違いではないのですが、これは数千万円規模の大企業案件を前提にした構成で、中小企業のオーダーメイドAI開発には、そのままだと重すぎます。
Mewtonでは、中小企業の業務AIを実装してきた経験から、各フェーズの 所要期間・費用・お客様の作業負担 を率直に開示しています。発注前に「思ったより重くないな」と判断できたほうが、結果としていい案件になるからです。
5フェーズの全体像 — 期間・費用・お客様の作業
最初に全体像を1枚で示します。30〜100万円帯のオーダーメイドAI開発を想定したケースです。
| フェーズ | 期間 | 費用 | お客様の作業時間 |
|---|---|---|---|
| ①ヒアリング | 1〜1.5時間 × 1〜2回 | 無料 | 約3〜5時間 |
| ②要件定義 | 1〜2週間 | 5〜15万円(合算可) | 約5〜10時間 |
| ③小さく試作 | 2〜3週間 | 10〜30万円(合算可) | 約3〜5時間(レビュー) |
| ④本実装 | 3〜5週間 | 残額 | 約3〜5時間(週次共有) |
| ⑤運用伴走 | 初月含む / 月次 | 月2〜10万円 | 月1〜2時間 |
合算するとお客様側の正味稼働は 15〜30時間 に収まります。週1時間ペースを2〜3ヶ月の感覚です。本業の片手間でも進められる粒度を、開発側の進め方で設計するのが大事だと考えています。
ここから各フェーズを順に詳しく見ていきます。
フェーズ①: 初回ヒアリング(無料)
最初は 1.5時間程度のオンライン打ち合わせ から始めます。Mewtonでは原則無料です。
ここでこちらから聞くのは、ほぼ次の4点です。
- いま、どの業務の、何に困っているか
- 月にどれくらいの時間・コストが消えているか
- 半年後にどうなっていたいか(数値+風景)
- いつまでに動かしたいか(緊急度)
事前にAI開発を依頼するときに用意すべき3つの資料で書いた 業務フロー・困りごとリスト・成功イメージ の3点が雑にでも揃っていると、初回1回で範囲・費用レンジ・進め方の見通しまで出ます。資料が無くても相談自体は当然できますが、その場合は2〜3回に分かれるイメージです。
ここで決めるのは「作る/作らない」と「どのパターンで作るか」の2点だけです。後者はオーダーメイドAI開発の費用が30〜100万円になる理由で整理した、API連携・RAG構築・ファインチューニングのどれが筋がいいかという判断です。
総務省の令和7年版 情報通信白書では、2024年度に日本企業の 49.7% が生成AIの活用・検討段階にあると報告されています。一方で未導入の阻害要因として最も多いのは「適切な活用方法が分からない」というもの。初回ヒアリングは「用途を一緒に絞り込む場」 と位置付けたほうが現実に合います。
フェーズ②: 要件定義(1〜2週間)
範囲が見えたら、何を作るか・作らないか を文書化します。
書くのは大層なものではなく、A4で5〜10枚のドキュメントです。中身はおおむね次の構成になります。
- 対象業務と現状フロー
- 解決したい困りごと(優先順位付き)
- AIが担う範囲と、人間が引き取る範囲
- 入出力データの形式とサンプル
- 「成功」と「不採用」の判定基準
- 連携する既存システム・利用ツール
- セキュリティ・データ取扱いの取り決め
経済産業省が2025年2月に公表したAIの利用・開発に関する契約チェックリスト、ならびにJDLAの生成AI開発契約ガイドラインでは、ユーザとベンダの責任分界・データの権利帰属・成果物の取扱いを契約段階で明文化することが繰り返し推奨されています。要件定義書はそのまま契約書の付属書になることが多いので、ここで雑にしないことが後段のトラブルを減らします。
お客様側の作業は 5〜10時間 ほどです。サンプルデータの提供、現場担当への確認、社内合意——これらをこちらが一方的に進めるのは不可能なので、ここはどうしても時間をいただきます。逆に、ここで現場の手応えを取りに行くと、後の本実装フェーズでの 「現場が使わない」リスクが大きく下がります。
このフェーズの費用は5〜15万円程度。多くの案件で 着手金と相殺する形 で進めるので、本実装と合算する流れが現実的です。
フェーズ③: 小さく試作(2〜3週間)
要件が固まったら、いきなり本実装に進む前に 動くプロトタイプ を作ります。中小企業向けの案件ではこの段階を、別建てのPoCにせず、本実装と地続きで進めるのが軽量化のコツです。
試作の狙いは3つ。
- 業務データで動かしてみて、想定どおり使えるか確かめる
- 現場の数人に触ってもらって、現実の反応を見る
- 本実装の見積もりを最終確定させる
たとえば社内ナレッジ検索のRAGなら、最初は数百ファイルだけ取り込んで、現場メンバー3〜5名で1週間使ってみる。資料作成サポートAIなら、過去テンプレートを2〜3パターンだけ学習させ、実際の提案書を1本書いてみる。それで 「これは行ける」か「ここを直さないとダメ」かの判断材料が一気に集まります(RAGの考え方はRAGとは何か — ChatGPTに自社データを使わせる仕組みで詳しく書きました)。
産総研の機械学習品質マネジメントガイドラインでも、本番投入前に「想定する利用環境での品質を継続的に確認する」プロセスが繰り返し示されています。試作はそのための場でもあります。
この段階でうまくいかないと分かるケースもあります。その場合は方針を変えるか、要件を狭めるか、ときには 「やめる」判断もあり得ます。ここで止められることが、結果として一番安く済む。本実装に進んでから「やっぱり違う」と分かるよりずっとマシです。
フェーズ④: 本実装(3〜5週間)
試作の手応えを踏まえて、本番品質に作り込みます。
具体的には次のような作業です。
- 試作で見えた論点を反映した実装
- データ範囲の拡張(全社データへの接続など)
- 権限管理・アクセス制御・ログ
- 既存システムとの連携(必要なら)
- エラー時の動作・運用ドキュメント
お客様側の作業は 週に30〜60分の進捗共有 が中心です。週次でデモを見て、気になる点をフィードバックする。フィードバックは Slack か Notion で気軽に投げてもらう運用にすると、心理的負担が下がります。
ここでよく聞かれるのが「途中で仕様を変えたくなったらどうなりますか」。基本的に、軽微な変更は柔軟に取り込みます。大きく変えたい場合は、追加費用と納期の相談を一度差し込みます。最初の要件定義で『最低ライン』と『あったらいい』を分けてある と、ここでの判断が早くなります。
AI開発にかかる費用相場でも書きましたが、Mewtonがこの工程を3〜5週間で巻き取れる最大の理由は、営業と開発が分かれていないことと、AI駆動開発で実装工数が1/3〜1/5に圧縮されていること の2点です。大手SIerの2〜3倍の見積もりは、ほとんどがこの構造のコスト差で説明できます。
フェーズ⑤: 運用伴走(初月の立ち上げ + 月次)
納品して終わり、にはしません。導入直後の 初月1ヶ月 は、現場に定着するまでの伴走期間と位置付けています。
具体的には次のような関わりです。
- 利用マニュアル・社内向け説明資料の作成支援
- 初期ユーザーへの導入レクチャー(オンラインで30分〜1時間)
- 想定外のエラー・利用パターンへの対応
- 利用ログを見て改善点を整理
2ヶ月目以降は月次の保守・改善契約に切り替えます。月額2〜10万円 が目安で、内訳は AI 利用料の従量課金(OpenAI や Anthropic などへの支払い)と、改修・モニタリングの工数です。
情報通信総合研究所が2025年7月に公表した企業における生成AI導入の現状と展望では、中小企業の生成AI導入の最大の阻害要因として「利用用途・シーンがない」が挙げられています。用途を発見するのは導入直後 であることが多いので、立ち上げ伴走を切り離してしまうと、せっかく作ったAIが半年で休眠するリスクが高くなります。
定期的な改善が必要なら、月10万円のAI顧問を組み合わせて、社内のAI活用全体を月次で進める形に切り替えることもできます。
なぜMewtonは「PoCを別フェーズにしない」のか
最後にひとつ、業界標準と違う点を率直に説明させてください。
世の中の「AI開発の流れ」のほとんどは、PoC(実証実験)を独立したフェーズ として置きます。PoCに100〜300万円、本実装にさらに数百万円。合計1000万円超になることもよくあります。
これは大企業の意思決定構造には合います。社内稟議を2回に分けて通せるし、PoCの結果でリスクを限定的に切り出せる。ただ、中小企業の30〜100万円帯のオーダーメイドAI開発で同じ構造を取ると、PoCだけで予算が消えて本実装に進めない という事故が起こりがちです。
そこでMewtonでは、試作(フェーズ③)を要件定義と本実装の橋渡しとして組み込み、独立したPoCにしません。試作で「行ける」と分かれば、そのまま本実装に地続きで進む。難しければ、ここで止める。意思決定の単位を1つに揃えるほうが、中小企業の規模では現実に合います。
逆に大企業の新規事業のように、不確実性が高くて段階的に投資を増やしたい場合は、外注では新規事業は成功しない — なぜパートナーが必要なのかで書いた新規事業パートナー型のスキームのほうが現実的です。要件未確定のまま「同じ船に乗って」進める形になります。
まとめ — 進め方が分かれば、相談のハードルは下がる
オーダーメイドAI開発の進め方をまとめると、次のとおりです。
- 5フェーズ: ヒアリング → 要件定義 → 小さく試作 → 本実装 → 運用伴走
- 相談から納品まで: 約1.5〜2.5ヶ月
- お客様の作業時間: 合計15〜30時間(週1時間ペースの感覚)
- 費用: 30〜100万円 + 月次2〜10万円
- PoCは別建てにしない: 試作を本実装と地続きで進める
「進め方が分からないから動けない」を「全体像が見えたから動ける」に変えるために、開発側が工程を率直に開示することは、結果として双方の時間を節約します。
具体的な相談に進みたい場合はオーダーメイドAI開発のサービスページから、まずは初回ヒアリング(無料・1.5時間)にお越しください。初期の整理を月次で進めたい場合はAI顧問、社内合意や担当者の壁打ちが必要な段階ならお問い合わせから相談内容を一言添えていただくのがスムーズです。
よくある質問
相談から納品まで、本当に2ヶ月程度で済むのですか
30〜100万円帯で要件が絞れているケースなら、約1.5〜2.5ヶ月が現実的な期間です。逆に、要件が「全部やりたい」と広い場合や、複数の基幹システム連携を含む場合は、もう少しかかります。最初に範囲を絞れるかどうか が、期間を決める最大の要因です。
お客様側で必要な作業時間はどれくらいですか
合計で 15〜30時間 が目安です。最も重いのが要件定義フェーズの5〜10時間で、現場ヒアリングやサンプルデータ提供が含まれます。本実装中は週1回30〜60分の進捗共有のみ。経営者ご本人が動く必要があるのはヒアリングと要件定義の初期だけで、それ以降は推進担当者がいれば代理対応可能です。
PoCをやってから本実装、というスタイルではないのですか
中小企業向けの30〜100万円帯では、試作(プロトタイプ)を独立したPoCにせず、要件定義と本実装の橋渡しとして組み込みます。意思決定の単位を1つに揃えるためです。大企業の数千万円規模の案件では、PoCを別建てにする方が合うので、案件規模に応じた使い分けです。
補助金を使う場合、進め方は変わりますか
基本フローは変わりませんが、申請書類用のドキュメント整備(事業計画書・効果見積もり)が追加で必要になります。中小企業のAI導入で使える補助金で書いた制度を使う場合、採択時期に合わせてフェーズ②要件定義のスケジュールを前倒しすることが多いです。
途中で仕様を変えたい場合の対応は
軽微な変更は柔軟に取り込みます。大きい変更(機能追加・対象業務の拡張など)は、追加費用と納期を一度相談させてください。要件定義の段階で 「最低ライン」と「あったらいい」を分けて文書化 していれば、ここでの判断は数日で結論が出ます。
納品後のサポートはどうなっていますか
初月は 立ち上げ伴走 として、現場定着までの支援を費用に含めています。2ヶ月目以降は月額2〜10万円の保守契約で、AI利用料の従量課金・改修・利用ログのモニタリングを含みます。社内のAI活用全体を月次で進めたい場合は、AI顧問契約と組み合わせる選択肢もあります。